riboni5235’s diary

英国庭園、ミュージカルファン、親子・ペアのアメショー3匹と暮らしています.バラ栽培アンティークも大好きです。よろしくお願いします!

<span itemprop="headline">日本と原発</span>

映画監督に制作を依頼するも、受けてくれる監督がいなかった為に、自ら「脱原発映画」を制作した河合弁護士。その熱意と、どうしても作らねばと思い立たせたものが何であったのかを確認すべく、3/8に鑑賞しました。

福島第1原発事故後に多数作られてきた脱原発映画”の、決定版というべきパワフルなドキュメンタリー作品です。(映画批評家前田有一





この映画を見たことを、新たな避難所で思い出すことのないように」。
映画のラスト近くで流れるこのナレーションが、今私たちが置かれている時代の厳しさと、二度と同じ誤りを過ちを繰り返させてはならないという制作者お二人の強い思いを感じさせました。



制作した河合弘之弁護士は、ダグラス・グラマン事件、イトマン事件など数々の経済事件を担当して凄腕の金融弁護士と称された人物。。

90年代から脱原発運動に関わる彼は、近年は大飯原発差し止め訴訟や、東電の歴代取締役に5兆5045億円という世界最高額の損害賠償を請求した株主代表訴訟など、日本の脱原発シーンをリードするカリスマ弁護士として知られています。

2014年。監督・製作:河合弘之、構成:海渡雄一、脚本:拝身風太郎、音楽:新垣隆。出演:青木秀樹、アナトーリー・チュマク、飯田哲也、エフゲーニャ・ステパノワ、大島堅一、川口登、小出裕章コンスタンティン・ロガノフスキー、古賀茂明鈴木大介、高野仁久、田中三彦馬場有


映画を見て最も衝撃的だったのは、福島第一原発事故が起こった翌日か翌々日、2号機の放射能濃度が異常に上昇し、非常に危険な状況に陥り、もし爆発が起これば、東日本は壊滅の危機に瀕していたという事。
撤退も視野に入っていた東電に管首相は、撤退はあり得ない旨を伝えます。しかし、正に奇跡としか言い様がない翌日の2号機の放射能濃度低下により、爆発の危機は回避。
危険度が如何に高かったか、それを感じながら見るうちに、体が硬直していきました。

●目に見えない形もないものが奪う、そこに暮らす人々の未来と過去。浪江町馬場町の悔しさをにじませた発言は、被災地の長としての責任感を強く感じさせました。それに対して国の責任者の無責任発言…。

原発事故とよく比較される自動車や航空機の事故。その2つの大きな違いは、前者は無限定に「種」の死が訪れ、後者に訪れるのは「個」の死でしかない、という事。

地震多発地域が示された世界地図上で、原発が多く立地しているのは日本のみ。地震発生数は世界平均の130倍。造る前から既に「アウト」であったことは明らか。

日本政治の「悪」が凝縮したものが原発。それは原子力ムラの莫大な利益循環システム。何と卑劣な事か…。利益を享受する自民が政権党である限り、その利権を捨てさせることの難しさが思われました。

原発の爆発により、生存者がいたにも拘らず、救出作業を断念せざるを得なかった消防団員の方の無念。そして災害後、心を病み、自殺した妻を思う、夫の無念。

原子力規制委員会が、再稼働の為に設けられて審査するのは「安全基準」ではなく「規制基準」。だから田中委員長が「安全を保障するものではない」と、川内原発審査後に発したのだと理解できました。

●震災発生時、原発の全電源消失は15:37、津波到達は15:39。という事は、事故を引き起こした原因である全電源消失は津波ではなく地震によるもの。つまり、日本の原発全てに、地震によって同事故が引き起こされる可能性があるという事。それによる「水平展開」を恐れる国と電力会社。

●3月11日まで「原発は絶対に壊れない」神話を浸透させ続けた国。想定外のことは起こるのだという事。

原発の稼働は、「抑止力」になると伝えた読売。原発から生まれるプルトニウムが兵器になる事の仄めかし。

原発を稼働しないことによる「国富流失」の嘘。原油輸入の為の負担増は円安の影響も。しかし、国富3000兆に対してその値は0・1%ほどでしかないこと。

●画期的だった「大飯原発三・四号機運転差止請求事件判決」。これが今後の「原発」裁判の道筋を示す希望と成り得ること。

速やかに「廃止」するのが最も経済的
とても分かりやすい結論として、それがすんなり受け止められた河合・海渡弁護士からのメッセージでした。





上映中、300人ほどの観衆がいたホールは、咳の音ひとつ聞こえない程に静まり返り、見ている全ての人が映画に集中していることを感じさせました。
首相の軽い発言、特に東京五輪誘致での「under control」の場面では、会場全体から失笑が漏れました。

河合弁護士は、共同制作者の海渡弁護士のことを、どこを切っても金太郎飴、と仰っていましたが、確かに柔和な表情と強い意志の力は、常に海渡弁護士の中から滲み出ているものでした。(昨年講演会に参加しました)
そう仰る河合弁護士も、喜怒哀楽を所々で見せながらも、終始エネルギッシュに、明るい表情でドキュメンタリー制作に関わっておられました。

映画の中ではインタビューの日付が記されていましたが、その最後のものは確か昨年9月。この映画の公開が始まったのが11月でしたから、本作が如何に急ピッチで仕上げられたかを知り、そこにまた、河合・海渡両氏の「脱原発」に向けた信念を感じました。

劇中音楽は、かつて佐村河内守さんのゴーストライターとして注目を浴びた新垣隆さん。
監督らの心意気に共感した新垣さんの音楽が、映画の各所で適切な背景を成していました。

原発の歴史、現状、非人間性、全てが網羅されたドキュメンタリー。「是非見て、知って、考えて下さい」、
そう多くの人に言いたい作品です。



昨晩ポッキーさんの記事で見つけた避難計画がいる発電なんて なぜ必要?と言う言葉は、危険極まりない核エネルギーを使って発電するということの馬鹿さ加減を、実に分かり易く的確に伝えてくれました。


転載元: “わが谷は緑なりき”~私の映画ノート