riboni5235’s diary

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<span itemprop="headline">(耕論)「橋下徹」を語ろう 想田和弘さん、谷口真由美さん、西川のりおさん</span>




 橋下徹大阪市長が政界引退を表明した。大阪府知事当選から7年余。熱狂と反発、対立や憎悪も生んだ時代の寵児(ちょうじ)は、地元大阪、この国の社会、そして政治に何をもたらしたのか。
 ■「劇場」は終わっていない 想田和弘さん(映画作家)
 橋下氏を危険な政治家だと考えてきた私にとって、政界引退は歓迎すべきことです。けれども「橋下劇場」は終わっていないのではないでしょうか。投票結果を受けた記者会見は、橋下氏の真骨頂。論理ではなく、人々の感情を操作することにたけた能力をいかんなく発揮し、「次の出番」につなげました。
 「間違っていた」「政治家冥利(みょうり)に尽きる」――。散り際の美学を愛する日本人の琴線に触れたため、「潔い」とか「すがすがしい」などと受け止められました。
 スポーツで惜敗した人だったら分かります。しかし、これは政治です。「大阪都構想が実現しなければ大阪はダメになる」とまで主張していた政治家が、「本当に悔いがない」「幸せな7年半だった」と笑顔で語り、彼の言葉通りならばダメになってしまうはずの大阪を全く心配していないように見えるのはどういうことなのでしょう。結局、住民投票は大阪のためではなく、彼個人のための私的な勝負事にすぎなかったのではないでしょうか。
 橋下氏が民主主義イコール多数決であり、政治プロセスを勝負事と誤解していることも気になります。本来、自立した個人が利害や価値観の違いを認めつつ、時間をかけて、それぞれが妥協をしながら合意形成を図ることこそが民主主義です。最終的には仕方なく多数決になりますが、大事なのは勝ち負けでない。少数派の権利が守られることで「敗者」にしないことを目指すものでしょう。
 また、彼はこの会見で民主主義を「すばらしい政治体制」と語り、「報道の自由は絶対に守らないといけない」と述べました。独裁が必要だと発言し、批判的な報道や言説を徹底的に攻撃してきたこれまでの姿勢を知る者からすれば笑止千万です。それが無批判に受け入れられるのは、橋下氏の弁舌の巧みさだけでなく、民主主義に対する浅い理解が日本人に広がっているからではないでしょうか。
 「民主主義は感情統治」と橋下氏はかつてつぶやきました。彼が使い、支持者に伝染するキャッチフレーズやコピーとなるような言葉は、人々が抱いている怒りや猜疑心(さいぎしん)を刺激し、ネガティブな感情に火をつけます。敵味方をはっきり分ける橋下氏の政治手法を、安倍晋三首相や日本中の政治家が模倣し始めてもいるようです。それは民主制の危機を意味します。
 だから引退表明に一喜一憂している場合ではない。「橋下的なるもの」に対して、「恐怖政治」「民主主義の蹂躙(じゅうりん)」といった紋切り型の言葉では、対抗できない。回り道のようでも、自分の言葉を紡ぎ、デモクラシーについての本質的な理解を深める必要があるのではないでしょうか。
 (聞き手・池田伸壹)
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 そうだかずひろ 70年生まれ。「選挙」などのドキュメンタリーで知られる。著書に「日本人は民主主義を捨てたがっているのか?」など。
 ■改革、これからが肝心や 谷口真由美さん(全日本おばちゃん党代表代行)
 大阪のおばちゃん、敵に回したら怖いで。人情家でおせっかいでユーモアもありますからな。町のオピニオンリーダーですねん。そんなおばちゃんから言わしたら、今の政治、おかしいわ。課題は山積やのに上から目線で話し合いもできへんオッサンだらけ。こらツッコミ入れなと3年前「全日本おばちゃん党」をフェイスブックに立ち上げましてん。党員拡大中ですわ。
 橋下さんですか。悪いけどオッサン政治家の典型やった。敵を作ってたたきつぶして、権力握ったら決めたことに従えと。標的が公務員と先生。うちの子の学校でも、先生萎縮してますもん。先生は本来、子ども叱るときは叱らなあかん。それが保護者の顔色うかごうて、何やお店の人みたいになった。変な先生がおってもしゃーない言いながらやってく懐の深さが大阪のよさやったと思うねん。それが消えてしもうたね。
 最初は橋下さんもオッサンちゃうかった。苦労もしてはる茶髪のお兄ちゃんが東京のエラい政治家や役人にも言うこと言う。おばちゃん、そういうのに弱いねん。でも石原慎太郎さんと組んだころから「顔つき悪うなった」っていうおばちゃんが増えた。
 時代も悪かったと思うわ。ネット社会で嫉妬が蔓延(まんえん)するようになりましたやろ。人間やから、何であの人だけ得して、とひがみたくなる時もある。でもそれは本来口に出したらアカンこと。本音と建前で世の中をうまく動かす知恵やね。それが名前も出さんと不満を吐き出す人が増えて、それをたきつけて政策を実現する原動力にした天才が橋下さんや。ツイッターでバカとかボケとか名指しされて身の危険を感じた人も多い。罵声の応酬はエスカレートして議論もできなくなった。
 今回の住民投票もそらしんどかったわ。どこへ行っても悪口と非難ばかり。大阪がこのままでいいとは誰も思てへんよ。でも何でここまでののしりあわなあきませんの。
 でも考えたら私らがサボってたツケですわ。議員さんの選挙にもええかげん。橋下さんが出てきたら喝采送って何とかしてくれと。結局しんどいことになって返ってきた。
 肝心なのはこれからや。お金がなくなる中で「誰かを攻撃したい」気持ちに振り回されへんためにはよほどの覚悟が必要やと思うねん。しんどいことを一人一人がどこまで受け止めるかが問われてるんと違いますか。おばちゃんの出番ですわ。少し前まで、大阪ではよその子が食卓にいるんが当たり前やった。おせっかいなおばちゃんは、ウチの子だけがよかったらええとは思てない。困ってる人はほっとけへん。子育ても介護もしんどいことはワケワケする社会。それがほんまの「身を切る改革」やと思いますねん。
 (聞き手 編集委員・稲垣えみ子)
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 たにぐちまゆみ 75年生まれ。大阪国際大准教授。おばちゃん党員は世界から集まり5千人を超えた。著書に「日本国憲法 大阪おばちゃん語訳」。
 ■表舞台離れ「伝説」になれ 西川のりおさん(漫才師)
 「橋下徹よ、伝説になれ!」と言いたいです。そのために必要なことはたった一つ。どんなに待望されても大臣にも国会議員にもならず、そして何百万円積まれても、昔からのつながりで頼まれても、テレビには一切出ないこと。
 記者会見で言った通り、弁護士と、やったとしても講演ぐらいの活動だけに専念したら、伝説になります。山口百恵になれます。そこでテレビのコメンテーターなんかやったら、全部パーです。
 もともと、ものすごい目立ちたがり屋。しかも目立ち方をよく知っていて、とても上手です。それはテレビに出ていたとき、台本にコメントの案を五つも六つも真っ黒になるまで書き込みして、放送作家が用意したことは一切使わないといった努力で身につけたものと聞いてます。
 賛成と反対をハッキリさせて、さらに注目を集めるのも上手ですね。われわれ大阪の芸人には、「師匠、師匠」と言葉だけでなく実際に会っても敬意を払ってくれます。それが大学教授とかマスコミの人に対してはものすごい批判をするでしょう。本能的に味方にすべきか、敵にすべきかをハッキリさせるんですよ。
 そんな人ですから、一切テレビに出ず、政治からも離れるのはつらいと思います。
 それでも、ぜひ伝説になって欲しいです。なぜなら、大阪は財政ひとつとっても、このままではいくら税金を上げても追いつかない状態。問題だらけです。大抵の政治家は、人気の出ない政策や次の選挙の票に結びつかないことは言い出さない。それがタブーになっていました。
 ところが橋下徹はいろんなタブーに手をつけた。それは間違いないですわ。ただ問題の種をまいて、賛否を際だたせて、かき混ぜるだけかき混ぜまくるけど、解決までたどり着いたものがいくつあったかは疑問です。でも、種まき専門としては、近年でナンバーワンちゃいますか。
 ただね、ここからは大阪の府民、市民に問題が突きつけられるんです。毎年優勝が求められる巨人に対して、阪神は3位でも、ようやったとほめてもらえます。役所もマスコミもぬるま湯なんです。橋下徹という引っかき回した人間がいなくなったからといって、元に戻って、何もしないのではダメなんです。これからは、大阪の府民、市民が自分でタブーに手をつけないといけない。
 結局のところ、住民投票橋下徹の人気投票で、あれだけの大接戦だったので、今は誰も冷静になれません。でも、何年かして、「考えてみたら、ぬるま湯につかっていた俺たちを、あの男が目ぇ覚まさせてくれたなあ」と思える時が来るかもしれません。そんな伝説になってほしいのです。
 (聞き手・池田伸壹)
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 にしかわのりお 51年生まれ。75年に結成した「西川のりお・上方よしお」で人気を博す。著書に「橋下徹はなぜ大阪で独裁政治ができるのか?」など。


転載元: 情報収集中&充電中