<span itemprop="headline">高遠菜穂子さんに聞く、東京新聞「こちら特報部」より</span>
高遠菜穂子さんに聞く
安全保障関連法案の審議が大詰めを迎えている。
安倍政権は、米国の戦争に巻き込まれることは「絶対にあり得ない」と言い募るが、日本には大義なきイラク戦争に加担した過去がある。
後方支援を含む自衛隊の「戦争参加」はどんな影響をもたらすのか。
8月下旬、千葉市で開かれた講演会で、高遠さんはスクリーンに真新しい病院の画像を映した。
「この写真を覚えていてください」。
画像の中には、医療支援に奔走する高遠さんの姿もある。
だが今、このかすかな復興の兆しは跡形もない。
今年8月13日には、母子病院も破壊された。
病院の空爆で新生児や母親を含む22人が死亡、55人が負傷したというり変わり果てた病院や黒焦げの遺体の画像を投影しながら、高遠さんはやりきれない表情で訴えた。
「イラク戦争を支持した日本にもこの混乱の責任がある。
なのに、米国や英国が大量破壊兵器を理由にした攻撃の誤りを認めても、日本はこ
の点だけは追従しない。
の点だけは追従しない。
イラク戦争開始直後の03年5月から、現地で住民の支援活動を続けてきた。
人質事件に巻き込まれたのは、04年4月のことだ。
撤退を求める武装集団に、他の二人の日本人とともにファルージヤ近郊で拉致された。
日本政府はこの要求を拒否。
3人は8日後に解放された。
帰国した高遠さんたちを待っていたのは「自己責任論」の激しいバッシング。
当時、自民党幹事長の立場にあった安倍首相も「納税者の税金を使っているし、政府も危険を冒して交渉しなければならない。
(人質たちに)自覚があったかどうか少し疑問だ」と発言し、バッシングを助長した。
精神的なショックは大きく、自宅に引きこもった。
自宅には何通も脅迫状が届いた。
家族は高遠さんに励ましの手紙しか見せていなかったが、帰国から4カ月後、黒い縁取りに家族の各前と「天誅」の文字が書かれたはがきを見つけてしまう。
「イラクで殺されていればよかった。私が殺されていたら家族がこんなふうに言われなかった」と泣きわめいた高遠さんは、母にぶたれた。
「二度とそんなこと言うんじゃない。早くどこでも行ってイラク人に会ってこい」
目が覚めた高遠さんは再びイラク支援に立ち上がる。
市民団体「イラクホープネットワーク」を設立し、隣国ヨルダンを拠点に支援活動を再開。
武装蜂起したスンニ派部族と政府軍が激しい戦闘を繰り広げた。
その隙に、ISが支配地域を拡大した。
「この一年、ISにも、ISを掃討する政府軍のどちらにもイラクの友人を殺された。
住民たちには行き場がない。
これ以上、友人たちが殺されるのを見たくない」高遠さんは、自衛隊の海外活動を拡大する安保法案を「世界の平和にも日本の安全にも役に立たない」と危ぶむ。
安倍首相は、海外で活動するNGOやボランティアを守る法案だとも強調している。
だが、この「邦人保護」の言葉に違和感がぬぐえない。
海外から奇異に映るほど日本の政治家たちは自国民の人質に対し冷淡だ。
イタリア人記者に「イタリアはどんな愚かな人間でも、犯罪者であっても助ける。
でも日本政府は違うよね」とあきれられた。
高遠さんは現地の知人から「日本には軍隊はないと聞いている」と真顔で聞かれたこともあった。
だが、やってきたのは武装した自衛隊。
誤解も含めて平和国家というブランドが日本人を守っていたが、もう日の丸を掲げて活動はできない」と話す。
実際、緊急物資を届ける際、現地スタッフの安全を考えると日本からの支援であることを隠さなければならなかった。
「人道支援と言いながら、また私たちを殺す側に回るのか」
海外メディアは「第二次世界大戦後初めて、日本が海外で戦争できる法律」と本質を突いた。
心配するのは、こうした世界の見方を多くの日本人が知らないでいることだ。
「日本のニュースだけでは国際情勢をまったく把握できない。
世界では『第三次世界大戦に突入している』と言われているのに、日本は『情報鎖国』の状態。危機感を共有していない」。
世界情勢に無頓着なまま、安保法案の成立を急ぐ現状を危険に感じる。
日本人ボランティアも減っている。
「日本人よりはるかに憎悪を集める米国人であっても、危険を顧みずに現地でボランティアを続ける人も少なくない。
厳しい反米感情を受け止め、現地で信頼を築いている。
「国内で平和憲法を守るだけでは足りない。むしろ日本は戦争を止めるための仲介もできるはず。
平和国家のブランドを生かし、何ができるかを考えてほしい」
【デスクメモ】
そうした現場を知る人たちは、こぞって安保法案に反対している。
日本の信頼萱口同めている彼らを、ざらなる危険にさらしてどうする。
安全な場所で「自己責任」を叫ぶのは簡単だ。
安全な場所で「自己責任」を叫ぶのは簡単だ。
イラク戦争を支持した責任はどうなったのか。(国)
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高遠菜穂子さんはNGO非戦ネットを通じても活動を行っています。
NGO非戦ネット
転載元: country-gentleman