<span itemprop="headline">元米兵の悲惨な状況知って 「トモダチ作戦」で被ばく提訴 </span>
元米兵の悲惨な状況知って 「トモダチ作戦」で被ばく提訴
2016/4/28 朝刊
東日本大震災直後の米軍による被災地支援「トモダチ作戦」で福島沖に派遣された米原子力空母ロナルド・レーガンの乗組員らが福島第一原発事故で被ばくしたとして、東京電力と原発メーカーに損害賠償を求めた訴訟をカリフォルニア州サンディエゴの米連邦地裁で起こしている。この問題を追っている日系人ジャーナリスト、エィミー・ツジモトさんは「日本人を助けようと奮闘した無名の兵士たちが悲惨な状況下に置かれている現実を知ってもらいたい」と訴える。
ロナルド・レーガンなど米海軍の七隻は二〇一一年三月十二日に福島沖に到着し、津波に流された人たちの救出活動などを実施。乗組員らはその際に原発事故による放射性物質の大量放出を知らされないまま被ばくしたとして、一二年十二月に提訴した。
ツジモトさんは、白血病や骨肉腫は放射性物質の摂取により引き起こされやすい病気で、高い放射線の値を示す当時の映像や資料が残っていることなどから因果関係は明らかだと反論する。「兵士たちの多くは除隊を余儀なくされ、闘病生活を送っている。東電が主張する日本での裁判は非人道的な冷たい仕打ちだ」
ツジモトさんは日系四世。医療関係の仕事に就いていた母親が一九四五年に広島で被爆した。母親は生前に被爆について語らなかったが、ツジモトさんは幼いころに寝たきりの時期があり、目や耳の不調、嚢胞(のうほう)に悩まされた。被爆の影響と確信している。大学卒業後にジャーナリストになって国際問題を論じ、放射線被ばく、とりわけ若者に対する身体的影響について発信を続けてきた。
福島の事故後は日本での講演活動などを通じて、特に福島の子どもたちを被ばくから守るための活動を続ける。「被ばくで、遺伝子や細胞が破壊され、健康被害をもたらす現実。若い人たちが人生を切り開く大事な時期に、健康被害によってチャレンジの機を失ったりすることがないよう、適切な医療対策が必要だ」
事故から五年がすぎ、ややもすると事故が風化しつつある中で、「兵士たちの苦悩を少しでも知ることで、日本の人々が福島の惨状にあらためて目を向けてもらえるようつなげたい。放射線が子どもたちに与える影響の怖さを命ある限り伝え続けたい」と話している。
◆5月、小泉元首相が訪米し原告らと面会
「日本人を助けるために全力を傾注して活躍してくれた元兵士の方々のお見舞い」が目的という。五月十七日に現地で記者会見を予定している。
(佐藤大)