riboni5235’s diary

英国庭園、ミュージカルファン、親子・ペアのアメショー3匹と暮らしています.バラ栽培アンティークも大好きです。よろしくお願いします!

<span itemprop="headline">イラクに行った米軍兵士たちの言葉ほど説得力のあるものはない</span>

これは2004年のイラク戦争に派遣された米軍兵士たちがマイケル・ムーアに送ったメールの内容だ。

日本は今、他国からの防衛、さらに突っ込んで紛争国への派遣などの議論に湧いている。

確かに、右も左も反対派も中立派も賛成派も、無関心派さえ、間違ったことを言っていない。
ただし、それはモノゴトの部分である。
正しいことも言っていないそれもモノゴトの部分である。

矛盾しているようだが、私たちの議論は、正論であり理想であり、妄想なのだ。
モノゴトには正邪が混濁している。正邪は視点を容易に変えられる。長所が短所になるように。
そして必ず裏表がある。つまり裏の見えない部分を持っている。

したがって、どんな明快な意見にも心に突き刺さるような説得力がない
なぜか? そこには当事者がいないからだ。
体験者となるものがいないからだ。

まさに大捜査線の青島の言葉をもじると「戦争は私たちの街で起きているんじゃない。戦場で起きているんだ」ということになる。
私たちは青島ではない。会議室側の人間なのだ。

真に心を打つものは経験した本人の言葉だけだ。

ポプラ社マイケル・ムーアへ」戦場から届いた107通の手紙より~以下部分抜粋させていただきます。

――あと何人死ねばいい? あと何人脚を失えばここから帰れる?――

二日前、親友のひとりが両足を吹き飛ばされました。派遣直前に結婚して、ハネムーンにすら行けなかった男です。
見舞ったあと、あまりにも辛すぎて、ぼくらの胸にはまたも疑問が沸いてきました。
あと何人死ねばいい? あと何人脚を失えばここから帰れる?

――軍隊に入ったものは一人残らず合衆国憲法を支持し擁護すると宣誓しています――

私たちの軍隊は共和国を守るためのものです。独裁者を倒したり「民主体制」をつくりあげたり、世界を万人に
とってより良き場所にするためのものではありません。
それはときには崇高なな目標になるでしょうが、自由で民主主義的な社会のなすべき仕事ではありません。
そんなことを始めれば共和国ではなく、帝国になってしまいます。

――口先だけのタカ派にパトロールさせろ――

ああいう偉そうなバカどもは、迫撃砲の攻撃が日常茶飯事の場所に身を置いたことがないんだ。
賭けてもいいが、やつらは爆発音も聞いたことがなければ、仲間が無事でありますようにと祈ったこともないはずだ。

――9.11テロの直後は自分たちの正義が信じられたし、国民の広い支持も受けられた――

それが、ほとんど一夜にして消え失せた。
政府がぼくらに狂気の沙汰の攻撃をやらせると知ったときの、あの憂鬱は言葉では説明できません。
ぼくらは(子供たちも)この先、何十年もその混乱と戦い続けなくてはならないでしょう。

――おれはただ国を守りたいだけで、政治的な裏の目的をもったこんな戦争の手先にはなりたくない――

みんな仲間を守るためなら命なんか惜しくない。けれど、ここに来て一年以上が過ぎ、多くの仲間が死んだり、手足を失ったりするのを見た。おれはあいつをほんとうの大統領とは思っていない。あいつは国民の代表なんかじゃないし、おれたいの立場に立って考えたこともないんだ。

――あっさり誓約書にサインして、人生を売り渡してしまった甘ちゃんの19歳でした――

志願しようかというものが新兵募集官のところへ行くのは「入隊して国のために死のう」と呼びかけるポスターのせいではありません。背中を押すのは「三万五千ドルの就学金を稼ごう」という言葉です。

ぼくはイラクへ来てみて、戦争にずたずたにされ、貧困にあえぐイラク人のことが少しわかってきました。
ぼくは人道的支援ていうやつもやりましたが、こういう人たちが戦争のせいで、とりわけまったく必要のない戦争のせいでいちばん苦しむんです。

イラクは過去も現在も未来も世界やアメリカの脅威ではありません。テロリストの大半は多国籍軍に歯向かうためイラクに流れ込んだ外国人です。
――たしかに僕は誓約書にサインして軍務につくと約束した――

誇りを持って約束した。でも、ぼくたちの軍隊がこれほど利己的で、陰険で、不名誉な形で利用されるとは思いもよらなかったんです。ほんの数人のお偉いさんのために命を賭けろとは、誓約書のどこにも書いていなかった。
ぼくの誓約書にあったのは。アメリカ合衆国憲法を守りぬくべし、それだけなんだ!

戦争請負会社のやつらは、ぼくらと同じ作業をして月に一万五千ドルを受け取ってます。ぼくの月給は四千ドルです。
どうなっているんだ? おいおいここじゃ何かとてつもないインチキが行われているみたいだぞ!

この無意味極まる戦争をするために、すでに充分すぎる人員が投入されているのに、なぜこれ以上の人間の一生をメチャクチャにするんでしょう? 連中はしょうもない戦争で大儲けし、ぼくら兵隊がいろんな形でツケを払わされているってわけです。明日のことはわからない。せめて生きて帰れますように。

――脅威に見える民間人を殺すと決めたら、即、撃ち殺せ――

うちの一等軍曹は言います。「おれはおむつ頭のターバン野郎に部下を殺されるより、始末書を書くほうがましだ」聞くだけで辛くなるセリフです。

ぼくはそんなふうに、いつも緊張している生き方は知らなくて、慣れるのには、ほんと苦労しました。

戦争に対する見方は、ここに着いたころにくらべて、完全に逆転しました。
最初の週に迫撃砲の攻撃で一名が死亡し、それから完璧に様変わりしたのです。

隊の仲間は国の家族に、ブッシュでなくジョン・ケリーを支援するよう呼びかけています。

――もう前のように誇らしい気持ちで星条旗に敬礼はできない――

差し出し名は匿名にします。最高司令官が大嫌いです。あの男がアメリカに対してしたこと、兵士や罪もないイラク人にしたことの報いを受けて地獄で焼かれろとつい祈ってしまいます。これから三年、私は暗鬱たる気持ちで国のために働くことになるでしょう。

アメリカという国があの最低の男を大統領として据え、国民の半分は今もあいつを支持しているからです。

「なぜ、私たちを巻き込んだの? 私たちはあなたのせいでこの最悪の戦場にいるのよ」

――生物としての快適さや自由をすべてあきらめ、凶暴なる国家に自由を売り渡しました――

五十度の気温でエアコンなしに眠り、警報でたたき起こされ、来る日も来る日も砂嵐の砂まみれで起き出し、シャワーなんて皆無、用を足すのはハエがむらがる携帯トイレという日常です。

ここでの生活が始まってしばらくすると、何もすることがなくなって、先の楽しみなんて一つもないという精神状態がやってきます。いつ家に帰れるかわからないし、戦場がすべて、そんな感じです。

以上、マイケル・ムーアへ」戦場から届いた107通の手紙から、いくつかを短く抜粋した。




ここから見えてくるのは、兵士の大半は映画で観るような士気の高い戦闘プロではなく、ごくごく普通のアメリカ青年たちだということだ。

志願した理由はやはり「奨学金」「給与」だ。

私たち国民は彼らに強いプロ根性と深い愛国心を求める。だがそれは幻想だ。

彼らは確かに国を守りたいと思う。だが、それは契約書を交わしたからという誠実な気持ちからだ。戦場で「国のために」というイデオロギーを思い出すものは、ほとんどいないと兵士は言う。

ではなんのために命をかけるか? それは「同じ境遇に立つ仲間のため」なのだ。
「仲間のためなら死ねる」というのが本音なのだ。それによって互いが互いを守り合うからだ。

戦場を知らない第三者が、どんなに「正しい」ことを言おうとも、それはだれの心にも響かない。

しょせん、戦争賛成派は彼らを煽って、たいくつな日常を高揚させているだけだし、反対派は優しい自分という偽善を振りまいているだけなのだ
私たちに何か言う資格があるのか? まず戦場で盾になり死の淵を経験するか、鉾になり罪ない人を殺してから議論に加われれば、行くべき国の方向が見えて来るかもしれない。

そして言うまでもないことだが、国の最高司令官から、まず戦場へ行くべきだろう。


転載元: あなたの知らない視点で語りたい~詩 小説 エッセイ