riboni5235’s diary

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<span itemprop="headline">マスメディア論、アベ総理を不機嫌にさせてこそ、本当のジャーナリストby久米宏氏</span>











「安倍さんが生放送の番組で不機嫌になったら、それは勲章ですよ。ニコニコ笑っていたら、ダメ。その報道番組はロクなものではない。宗派を忘れたお寺みたいなものです。例えば、宗教法人であるお寺は持続する事に使命がありますよね。廃寺になってしまえば、お墓を守る人がいなくなりますから。一方で、宗派の教えを守る事も、お寺に取って第一義的に大切な事です。民放も同じ。企業として持続する事と同時に、ニュースを伝える人間は守らなければならない矜持やルールがある。それが忘れられている」

久米宏・独占インタビュー「テレビのニュースがつまらなくなったワケ」〈週刊朝日朝日新聞出版 dot. 6月23日
テレビをつければ、舛添問題ばかり──。最近は「ニュース番組が面白くない!」と思っている人が多いのではないか。それもその筈、安倍政権に物申していた人らがテレビから次々と消え、活気はイマイチに。久米宏さんの目には、現状はどう映るのか。

『緊急復刊朝日ジャーナル』(6月27日発売)では、久米さんが今のマスコミに対する率直な意見を吐露。その一部を紹介する。

──今春、岸井成格さん、古舘伊知郎さん、国谷裕子さんがキャスターを辞め、夜のニュース番組が大きく変わりました。 

久米氏「4月に僕のラジオ番組で『テレビのニュース番組を斬る』という特集をやったんです。それで、普段はあまり見ない各局のニュース番組を見比べてみた。気づいたのは、番組の構成、雰囲気、言葉遣い、何から何まで似ているんですよね。昼のワイドショーは特に同じです」

──今のニュース番組の基礎は、久米さんが1985年に始めた「ニュースステーション」にあるのではないですか。 

久米氏「僕は『他の番組と違う事をやろう』としか考えていなかった。極端な話、キャスターが前を向いて話す必要もないんじゃないかとか。そういった工夫をしないと、他局に勝てなかったから。当時も次々にニュース番組が出てきましたが、ライバルが増えれば、他と違う切り口や、話し方を変えないといけない。『どうやって視聴者に伝えるか』を徹底的に考えて、他とは違う、手触り感のある番組を作ることが大切なんです。 それが今は、北朝鮮取材で平壌から中継しても、どの局も同じ場所にリポーターが立ち、同じ内容を伝える。北朝鮮当局から規制があっても、リポーターは平壌の散髪屋に行って、自分の髪を切ってもらう位の事は出来る筈です。それでテレビに映って、『これが平壌で流行の髪形です』と話せばいい。それ位の工夫をやる人がいないというのが、不思議ですよね」

──最近では、高市早苗総務相が国会で、政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、テレビ局への停波について言及するなど、テレビ報道への圧力が強まっていると言われています。 

久米氏「今はニュースの現場にいないので分かりませんが、ニュースステーションをやっていた時に、放送局に圧力があったとは聞いた事がありません。唯一、思い出せるのは、番組を始めて1年位経った時に、自民党の幹部から「毎晩見てますよ」と連絡が来た事位。その人からすると圧力なんて思ってもないかもしれませんが。
先日、元NHK池上彰さんとニュース番組の話になりました。池上さんは、今のニュース番組に元気がないのは、テレビ局に「自粛」の空気が広がっているからだと。確かに、NHKの会長に籾井勝人さんがなって、「政府が右と言うものを左と言う訳にはいかない」と言っていますから、現場は萎縮しているのかもしれない。 ただ、もっと根源的な話をすると、放送局が持つべき「矜持」が失われているのではないかと思うんです。世の中には色んな企業があります。収益を上げて、組織を存続させる事を目的としていますが、利益以外にも、その企業が存在している理由がある筈です。 例えば、宗教法人であるお寺は持続する事に使命がありますよね。廃寺になってしまえば、お墓を守る人がいなくなりますから。一方で、宗派の教えを守る事も、お寺に取って第一義的に大切な事です。 民放も同じ。企業として持続する事と同時に、ニュースを伝える人間は守らなければならない矜持やルールがある。それが忘れられている」

──いまやニュース番組でも台本通り、打ち合わせ通りに進行することが多いと聞きます。 

久米氏「それでは生放送の面白さは出ない。僕は、前日に考えた質問よりも、当日の本番中に思いついた質問を優先していた。その方が面白いからです。前日に考えた質問なんてつまらない」

──選挙特番の「選挙ステーション」などでも、意表をつく質問で政治家を怒らせていました。 

久米氏「橋本龍太郎さんや森喜朗さんは露骨でしたね。僕は政治家が不機嫌になると、嬉しいんですよ。他の番組でニコニコしていた人が、僕の番組では苦々しい表情になる。それを引き出す為に、色んな質問を考える訳です。 人間、同じ質問を同じように答えるのって面白くない。その場で一生懸命考えて初めて、命のある言葉になる。顔つきも変わる。 安倍さんが生放送の番組で不機嫌になったら、それは勲章ですよ。ニコニコ笑っていたら、ダメ。その報道番組はロクなものではない。宗派を忘れたお寺みたいなものです」

──安倍政権は「テレビにどう映るか」を細かく考えて、情報発信をしていると言われています。

久米氏「妻の昭恵さんが言うには、安倍さんは映画好きで、映画監督になりたかったと言っているそうですね。僕は、とても映画監督に向いているとは思えないけど(笑)。 ただ、安倍さんは、映像については、そこら辺のテレビマンより関心があるかも知れない。少なくともテレビマンは、安倍さんより映像のプロであって欲しい」

──今の日本で期待出来るキャスターはいますか。 

久米氏「いませんね」

──では、今後、テレビニュースを面白くしてくれるキャスターは出てこないのでしょうか。 

久米氏「一人出てくれば、直ぐに変わりますよ。テレビってそういうものです。 でも、新聞記者がメインキャスターや重要なコメンテーターをやっている限りはダメでしょうね。ニュースの解説には、勿論知識や教養が大切です。ただ、テレビでは「何を言うか」よりも「どういう言い方をするか」の方が重要な場合がある。そこがテレビの難しい所。 踏み込んで言うと、どんな例え話が最も視聴者に伝わるのか。テレビは新聞記事に比べて文字量が圧倒的に少ない。そこを考えているキャスターやコメンテーターがどれだけいるのか。筑紫哲也さんは新聞記者出身でしたが、よく考えていましたね。映画も好きで、テレビについても研究をしていました」

──ニュース番組の現状を変える為に、今でも久米さんのニュース番組復帰を期待する声がありますが。 

久米氏「よく聞かれるんですけどね。毎晩ニュース番組をやるのって大変なんですよ(笑)」

週刊朝日  2016年7月1日号


転載元: 情報収集中&放電中