riboni5235’s diary

英国庭園、ミュージカルファン、親子・ペアのアメショー3匹と暮らしています.バラ栽培アンティークも大好きです。よろしくお願いします!

「狗賓童子の島」を読んで

飯嶋和一作品が好きです。反権力、庶民の目で描く。
『出星前夜』を読んで感心したので『星夜航行 』を図書館に
リクエストしたら42人待ち
 
こんなにこういう本を求める人が多いから世の中変わるはず、希望持ちます。
その間に広瀬隆「日本近代史入門黒い人脈と金脈」を借りてきました。
 
他に国家の犯罪 時宜えた出版として中日新聞に紹介された「袋小路の人々」「サダと二人の女」を予約しています。
 
 
イメージ 1
 
天草四郎のようなスターではなく
歴史の大波の中には泡のごとくはかなく消えてしまう庶民の視線からとらえ直すことで、これまでの島原の乱ものにはなかったドラマを生み出すことに成功した「出星前夜」
豊崎由美中日新聞、9月1日
島原の乱の蜂起2万7000~3万7000人、壮年の男は5000人しかいなかった。後は女、子供、老人だった。

7月22日は「マグダレナのマリアの祝日」で女人たちの特別な祝祭日。
夜通しの盛大な祭りが行われた。「罪女」がキリストの復活を最初に確認したのだ。
この日本の戦乱の時代、女人は男の所有する家財道具、後継ぎを産む道具、贈答品だった。そんな時代にヴァリャーノをはじめとしてすぐれた宣教師が「女たちもまた神によって作られた同じ救済を受けるべき価値と権利を持った存在であることを教えた。彼女たち一人ひとりの人格と魂は、全世界の権力や価値にも勝る尊いものとして確認されることとなった。男たちによって押し付けられた、罪や汚れ、世の中の不当な仕組みから解放されるべき尊い存在であることを知るにいたった聖母マリア」の生誕の祝日より南目の女たちにとって重要な一日だった。こういうことを書いてくれる作者には感謝。
 
イメージ 2
 
大塩平八郎の蜂起に連座した父親の罪により
隠岐の島後(どうご)に流刑となった常太郎が島民と共に
幕末の荒波の中を生き抜く姿を描く。
 
  豊崎由美中日新聞、9月1日
 
半可通夫
2018年9月21日
 
73㌻子供心に不思議でしたのは、行く先々の河内街道に大勢の人々が出て、なぜかわたしどもに手を合わせたりすること、
役人が大勢いるにも関わらず縛られて歩いてる私を見て、まだ幼い子供ではないかと、食ってかかる人もいたりして私どもに優しかった。
六尺棒刺股、つく棒など恐ろしげなものを手にした役人手下たちが大勢取り囲んでいるにもかかわらず
握り飯やら水稲などを私どもに手渡そうとする人が何人も、何人もおられた…
 
泣けます。
日照りが酷い年、
見かねた市郎右衛門は自力で田畑をよみがえらせた。
代官は何もしない
 
それが露見して極悪人として獄に下され、牢屋ではてました
 
村人の暮らしがどうなろうとおかみは年貢の増収しか頭になく、商人は自らの儲けのために狂奔
幕府は勝手に流人を島民に押し付けるばかりで
島の治安は島の手で守るしかなかった
 
島の女は男より強くなければ生きていけない
 
404p
米を食べられないのに「拝借米を買わされる
お上が民を騙すのは今に始まったことではない、信じる方がどうかしている。だが騙すほどにもほどが有る。
 
米問屋を打ちこわし
だが島民が食わずして買わされたコメを路上にぶちまけ、踏みにじる。
何一つ持ち去らない
 
p406大塩の檄文
p415将軍の失政無策を公然と批判
p418いざ異国から侵犯されても藩役人等何の役にも立たず、果敢に抵抗して戦死したのは土着郷士と百姓だけだった
 
稲作(早乙女は神)種痘、漢方薬の知識も読みがいが有ります。
 
紫陽花
2015年9月1日
形式: 単行本
作者の作品としては「出星前夜」に続いて本作を読んだ。「出星前夜」は「島原の乱」を題に採りながら、単なるヒーロー譚・悲劇譚に陥らず、権力側の腐敗とそれに対する民衆の怒りとを圧倒的な描写力で活写した力作だった。本作もそれと類似の意匠を有した負けず劣らずの力作だが、題材に新規性がある。また、「出星前夜」における"寿安"の成長過程をより深く掘り下げようとの意図も感じられた。

本作の題材は「島原の乱」から約200年後に起こった「大塩平八郎の乱」(とその後)。当然、権力側の腐敗はより悪化している。この着眼点がまず優れている。物語は「乱」の9年後に大塩の高弟の息子の常太郎が隠岐島諸島の1つ「島後」に流罪になった所から始まる。即ち、「狗賓童子の島」とは「島後」であり、「狗賓童子」とは「島後」において「狗賓」から特殊な役目・能力を授かった若者の事を指す。まず、常太郎が流人でありながら、「島後」で歓待される様子を描き、権力側の腐敗と大塩人気の高さを印象付け、一転して、9年前の「大塩平八郎の乱」及びその背景の詳細を描いて、その印象を更に強めるという出だしが流麗かつ本作全体を説得力あるものとしている。

ここから先は常太郎の成長物語であり、幕末史そのものでもある。常太郎が医学の道を志すのは、上述の通り、"寿安"の継承であろう。私の意表を突いたのは、常太郎が稲作を試みる事である。これによって、稲作に関する神話を含め、農家の方が如何に自然を畏敬し、地道で丹念な作業を行なっているかが良く伝わって来た。本作は島人の視座から見た幕末史でもあり、奇縁によって結ばれた人々の一体感の醸成の物語でもあるのだ。そして、これに続くエピソードの豊饒性には目を見張るものがある。種痘(!)による疱瘡との闘い、異国人によってもたらされた猖獗を極めるコレラとの闘い、異国対策用の無意味な農兵の徴集、米価上昇による島人の苦しみと対立、そして、とうとう勃発する島人の一揆等々、枚挙に暇がなく、もう数冊分の小説を読んだ様な充実感を覚えた。特に、島人の一揆が「大塩平八郎の乱」と相似形である点に作者の意匠を見る思いがした。また、夥しい数の登場人物を描き分ける作者の筆力にも感心した。その中で、島女の逞しさを体現する寡黙な"お初"の造形が光る。

大塩平八郎の乱」が幕府崩壊の予兆だったという言説は良く耳にするが、その過程をこれ程までに緻密に描いた小説は稀有ではないか。豊饒なエピソードと合わせ、時代小説の金字塔と言っても過言ではない傑作だと思った。https://www.amazon.co.jp/%E7%8B%97%E8%B3%93-%E3%81%90%E3%81%B2%E3%82%93-%E7%AB%A5%E5%AD%90%E3%81%AE%E5%B3%B6-%E9%A3%AF%E5%B6%8B-%E5%92%8C%E4%B8%80/dp/409386344X/ref=asap_bc?ie=UTF8