<span itemprop="headline">美しく幻想的な「アンジェリカの微笑み」</span>
予告編に惹かれて鑑賞しました。
日本で言うと雨月物語か牡丹灯籠のような話ですが、
静寂で美しい音楽と映像に魅了されました。
男性客が多いのも珍しい。
寝息が聞こえてきましたが私は全然眠くなくてこの不思議な物語を堪能し、今でも映像がちらつきます。
主人公の青年は寡黙なユダヤ人でブドウ畑で農夫たちが歌いながら
力強く農作業していると朝食も取らず飛んでいきます。
家主の女性が今は機械の時代だと、あきれます。
朝食を取らないことや、取りつかれたような彼を心配してくれます。
その女性は猫と小鳥を飼っています。
亡くなった美女の写真とたくましい無骨な農夫の写真が一緒につるされてるシーン、
絵に描かれる窓が好きなのですがこの映画にも度々出てきます。
下宿人たちの哲学談義も面白い。
私はこの高齢の監督もオルテガ・イ・ガセットも知らなかったので検索したら、
ちょっと勉強しないと。
結末は衝撃的でした。
二人の空中遊泳シーン、サイレント映画のトリック撮影の手法なのに新鮮で幻想的に見えます。
アンジェリカがなぜ彼に取りつくのかも謎、なぜって彼女には…
2015年4月に106歳で亡くなるまで、精力的に映画を撮り続けたマノエル・ド・オリベイラ監督が101歳の時にメガホンをとった一作。若くして亡くなった娘の写真撮影を依頼されたイザクは、白い死に装束姿で花束を手に眠るように横たわるアンジェリカにカメラを向けた。イザクがピントを合わせた瞬間、ファインダー越しのアンジェリカがまぶたを開き、イザクにやさしく微笑んだ。驚きながらも撮影を終えたイザクが写真を現像すると、今度は写真の中からアンジェリカが微笑みかけた。連続する不思議な出来事から、すっかりアンジェリカに心を奪われてしまったイザク。そんな彼の思いに応えるかのように、アンジェリカの幻影がイザクの前に姿を現す。イザク役にオリベイラ作品の常連俳優で、監督の実の孫でもあるリカルド・トレパ。アンジェリカ役に「女王フアナ」「シルビアのいる街で」のピラール・ロペス・デ・アジャラ。
一見、溝口健二の「雨月物語」を想起させる亡霊譚だが、歓喜の表情をたたえたイザクとアンジェリカが抱きあったまま、空中遊泳するモノクロのシーンは、稚気溢れるキッチュなサイレント映画のトリック撮影の手法が意図的に駆使され、かえって玄妙で甘美な幻想境へとみる者を誘う。