riboni5235’s diary

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<span itemprop="headline">日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか 矢部宏治 著</span>

◆9条も骨抜きの実態

[評者]三上治=評論家

 刺激的な標題である。戦後一貫して戦争への反対を続けてきた、そして今もしている私たちに、既に日本は十分に「戦争のできる国」になっているぜ、という警鐘をこめているのだ。「戦争のできる国」への動きに反対する運動の中でも、現代までの日本の具体的な軍事態勢がどうなっているかは気になることだったが、本書はその実態を明らかにしている。それを知ることはやはり驚きだ。
 戦後の日本の「戦争」は、一言でいえばアメリカ軍の要請による自衛隊の海外での参戦だった。歴代の政府は憲法九条と立憲主義を盾にそれを拒んできた。しかし、その代償にアメリカの戦争に追随し、裏で秘密裏に戦争態勢の構築を進めてきた。この実態がアメリカ軍の指揮(隷属)下にある自衛隊も含め明るみにされる。戦後の新旧の安保体制や日米同盟の歴史を含めた史的裏付けも豊富であり、戦後史としても興味深く読める。
 アメリカが日本の基地を自由に使用できる基地権。創設された自衛隊がアメリカ軍の指揮下にある指揮権。これを支える政治体制としての日米合同委員会。その三つを軸に「戦争のできる」日本の態勢の現状をあぶりだす。それらの全貌を国民はほとんど知らされていない。日本は独立国家であり、憲法九条もある。「戦争のできる国」を疑問視もできるが、それを上回る説得力が本書にはある。
 (集英社インターナショナル・1296円)
 <やべ・こうじ> 1960年生まれ。書籍情報社代表。著書『戦争をしない国』など。

◆もう1冊

 豊田祐基子著『「共犯」の同盟史』(岩波書店)。岸内閣から安倍内閣まで、日米同盟をめぐる密約の歴史を検証する。





以下は8月12日中日新聞夕刊より

矢部宏治

鳩山政権は子育て支援や農家への個別保障等庶民の暮らしに手厚い政策を掲げた政権でした。あのまま続いていたら、私たち日本人は現在とまったく違った16年を生きていたと思います。

しかし…鳩山さん自身の証言により日本の首相と在日米軍の方針が対立した時、日本の高級官僚ちは、在日米軍の方に付くと言う事実が明らかになったのです


米軍が日本の国土全体をいつでもどこでも基地に出来る事は外務省の内部文書が認めています

日本国内での米軍関係者の犯罪は基本的に裁かないという「裁判権放棄機密」
が存在していることもわかっています。



安部首相に対抗するには護憲派が国民の多数派が支持出来るような改憲案を一致して考えだし、広く提示する必要があるのです。



フィリピンが87年に実現した「今後国内に外国人基地を置かない」を明記すること

もう一つはドイツ

東西ドイツの統一とEUの拡大に伴い、ドイツは主権を回復していきました。

これを参考にするなら日本が朝鮮半島での平和条約の締結に貢献し、その中で朝鮮戦争を原因とする米国との不平等な条約解消を進める。



PART 1では、すべての基地を近距離から撮影し、写真集を刊行した著者ならではの、基地に対する視点である(もちろん、沖縄の人たちには当り前であるが)。基地の存在が沖縄住民の生活や生命を脅かしながら、米軍基地関係者の住宅上空は決して飛ばないことに沖縄の矛盾が集約される。米軍による数々の事故や犯罪にも関わらず、戦後一貫して、「軍事植民地」としての沖縄の位置付けが変わらないのはなぜか。「最低でも県外移設」と言明した首相が、短期間で首相の座から引きづり下ろされたのはなぜか。こうして、憲法よりも効力がある日米安保条約や地位協定の位置付け、そして「日米合同委員会」でアメリカと日常的に交渉しながら、日本側から基地移転を引き留めるという驚くべき官僚たちの行動の根源が明らかにされる。米軍基地の存在そのものが「安保ムラ」の利権になっているのである。「従米国家」が現在の日本の正体(いわば「国体」)である。

PART 2の原発でも同様である。日米原子力協定により、原発関係の、電力会社・政治家・官僚・原発関連企業は、マスコミや御用学者を動員しながら、福島原発事故の被害を放置し、子供たちの甲状腺がん多発を無視し、原発再稼働に向けて必死である。「原発ムラ」は、世界最悪の事故にも全く懲りず、地震活発期にまたもや原発を動かして日本や世界を巨大なリスクにさらそうとしている。

本書の圧巻は、PART 3 およびPART 4の安保ムラ(同時に原発ムラ)の起源の探求である。最近の研究が明らかにしたように、日本国憲法が定められた経緯は、天皇制の維持と密接に関わっている。それによれば、「平和憲法」、「天皇制維持」、および「沖縄の軍事植民地化」はセットであり、現在に続く安保ムラの利権の根源となっているのである。また、戦後、ドイツが近隣諸国との友好関係構築に国を挙げて努力した結果、連合軍が作った国連憲章の「敵国条項」から事実上除外されているのに、相変わらず近隣諸国と摩擦を起こしている日本は、旧連合国(アメリカや中国を含む、世界の大多数の国々)からは、相変わらず「敵国」と見なされているという指摘には強い衝撃を受けた。現在の政権や政権政党を含む政治家や官僚はこのような基本的なことすら知らないとしか考えられない。

PART 5では、「自発的隷従」の歴史を振り返りながら、その起源を辿る。結局のところ、日本国憲法の内容を、保守派・リベラル派ともに十分吟味していないことが、現在の解釈改憲や、秘密保護法、集団的自衛権などの問題につながっているとの指摘に同感である。民主主義を自らの命を懸けて獲得せず、お仕着せのまま戦後70年を過ごした結果である。例外は、命懸けで自治や民主主義を獲得してきた沖縄である。辺野古移転に対する反対運動が県民の圧倒的多数で支持されている理由がよく分かる。「自発的隷従」に対する突破口は、沖縄の運動への連帯を行動で示すことである。ここに、日本全体が「自発的隷従」を脱する唯一の希望を見出せる。

敗戦で国が壊滅状態に陥った後、戦争責任を巡って、戦後すぐに「国民は騙されていた」との言説が流行したのに対して、伊丹万作は「騙されたものにも責任がある」として、安易な責任転嫁を戒めた。戦後史についても、「国民は騙されていた」では済まされない。本書で示された戦後史の真実を広めることで、二度と政治家・官僚・マスコミ・御用学者に騙されないようにすることが、今を生きる者の次世代への責任である。