戦争という見世物:
日清戦争祝捷大会潜入記 (叢書・知を究める)
- 木下 直之 単行本
前に読んだ「動物園巡礼」と同じ作者、図書館で借りました。
絵画,写真,つくりもの,それに軍歌や芝居……明治国家最初の対外戦争は,いかに国民の心をひとつにし,舞い上がらせたか。
なんか怖いです。流行というか、流されやすく、熱しやすい、すぐ責任を忘れる日本人。
音二郎は助走して芸者になり稼いだことも、
貞奴とヨーロッパ、
アメリカまで巡業
奴は大人気。奴という香水もできたのだったか。
引用です。
日清戦争の連戦連勝に東京中が沸いた明治二七年一二月九日。上野公園を会場に開催された「祝捷大会」へとタイムスリップ。
川上音二郎一座による野外劇、清国軍艦の撃沈劇、
野戦病院の再現、ハリボテの
凱旋門…見世物研究の第一人者が現場からレポートする。
藤崎健一
2014年5月11日
著者がタイムスリップして表題のイベント(便宜上、こう書きます)に潜入しレポする、というエンタメ的な作りをしています。
それ故にとっつきやすくなっています(更に付け加えると、一ページ当たりの文字数も少ないです)。
著者がレポするイベントの中身ですが…端的に述べるならば「熱しやすい」という国民性は100年前からさほど変わって
いないのだな、と。そして「熱しやすい」が故にとんでもないことを胸張ってやっていたのだな…と感じる物でした。
戦争に勝ったので浮かれるのは、まあ(実体験が無いから何となくですが)分かるのですが、*1)節度のかけらもない
ようなことを平気で行い、それを見て大衆は更に浮かれてしまう…危ない「もの」を感じてしまいました。
*1)敵兵の首を模したものを陳列、模した饅頭のようなものを売る等。
そういった模様を伝える先人の記録を、まとめて手に入りやすい形で世に出したというだけで著者と版元には
感謝します。
しかし、そういった良い内容にも関わらず、それを伝え難くしているのでは?と感じる点もあります。
一つ目は旧字体の引用文にルビが無い点。本文で引用する場合はカタカナを平仮名に変えて読みやすさの
改善を図っています。それをするのであれば、もう一歩踏み込んでルビをふってもらえると更に読みやすくなった
ことでしょう。
もう一つは参照用の地図があると便利だったのでは?と。イベントのメイン会場は上野公園ですが、著者は
会場入りする前にあちこちを巡って、勝利に浮かれる当時の東京を伝えています。
当然、分かるかる人もいるでしょうが、反対にそうでない方もおられるでしょう。
地名が多数出てくる分、こういった細やかなフォローがあればと感じた次第です。