riboni5235’s diary

英国庭園、ミュージカルファン、親子・ペアのアメショー3匹と暮らしています.バラ栽培アンティークも大好きです。よろしくお願いします!

<span itemprop="headline">井上ひさし「ロマンス」</span>





図書館の井上ひさし追悼コーナーにあったこの本を読み録画していた「ロマンス」を観ました。

本には井上さんが脚本のために作った綿密なメモが載っていて興味深いです。

私はチェーホフ作品がそんなに面白いと思ったことがないのに、日本で繰り返し「カモメ」や「桜の園」が演じられるのが理解できませんでした。

井上ひさし組曲虐殺で井上さんと多喜二が重なるのですが今回もそうでした。井上さんが辛い人間のために喜劇を目指したと同じ様にチェーホフが目指していたのは悲劇ではなく、笑いと娯楽性に富むボードヴィル劇だったというのがこのお芝居の眼目だと思います。それなら納得できるのです。

日本の新劇の宇野重吉らが悲劇としてしかとらえられなかったチェーホフ,それが井上さんの手にかかると喜劇ということで納得です。

チェーホフがもっと長生きできれば私にもわかるようにはっきりしてきたのではないでしょうか。

「登場人物の全員が外国人というのは本劇が初めて」、そう言えば井上さんは日本人の問題点を取り上げたオリジナル作品ばかりでしたから。ミュージカルでも私は日本を扱ったオリジナル作品が好きです。

妹のマリヤ( 松たか子 )が兄チェーホフのため生涯独身で教師として働き続けたのは、妻で女優オリガ(大竹しのぶ )と比べると痛ましいと思えます。

チェーホフは少年・青年・壮年・老年の4人の役者木場勝己段田安則生瀬勝久井上芳雄 によって演じられるところが見せます。

生瀬勝久は、NHKの爆笑サラリーマンNEO ここでは

ぴかちゅうさんのロマンスの記事から
苦学をして優秀な成績で医師になるあたりの正統派演技と、晩年の場面で見舞いにあらわれるトルストイ翁が人生訓を披露するときの喜劇味の軽妙さ(語りだしは「ワシは人生は拷問室だと思っているから、君が今苦しいのは仕方がない」。それをどうやり過ごすかの人生訓)。
井上芳雄もマリヤに求婚するイワンが予想以上の出来。蜷川演出「ハムレット」のレアティーズで苦しんでいた頃が嘘のようだ。チェーホフにつく実習生のド近眼の青年医師もよし。こまつ座の舞台は頻繁に観ているようで、「私はだれでしょう」観劇会で遭遇したのも懐かしい。今回は前から3列目で見たが、あらためて「井上くん、足長いなぁ」と感心。最後の役、ごま塩頭の鬘と髭をつけた演出家スタニフラフスキーは秋篠宮にそっくりで「やっぱりプリンス役者だなぁ」とクスっと笑えた。


『ロマンス』の作中人物チェーホフが何度も使う「ヴォードヴィル」とは、勿体ぶって深刻に偉そうに構え、そのくせ空疎な文学的態度に対する反抗と対立を意味する。現代日本の劇作家は帝政ロシアの劇作家と連帯し共闘して、軽くて楽しい文学の擁護と顕彰をおこなおうとする。しかもまことにヴォードヴィル的に。

 それがとりわけあざやかなのは、老い衰えてぼけた文豪トルストイチェーホフの病気見舞いに訪れ、人生論を説くくだり。劇作家と演出家の、『三人姉妹』の演出をめぐる激論の合間に老文豪の他愛もない人生訓がはいって、劇的緊張を保ちながら大いに笑わせる。しかもそれにつづく、傷心のチェーホフを慰めるためオリガがトルストイの物真似をするくだりは、歌舞伎の鸚鵡(おうむ)(主役が派手なしぐさや利(き)きぜりふを言って引込んでから、三枚目の役がその通りの真似をする喜劇的演出)を応用して、藍より青きもの。笑劇的効果をあげて楽しませながら夫婦の情愛をじっくり味わわせる円熟した作劇術で、わが近代演劇最初の趣向かもしれない。うまいなあと嘆賞した。

トルストイ『説きつづける人生心得十二カ条は、人生の苦しみを和らげる秘訣で、「第一条、指にトゲが刺さったら、『よかった、これが目じゃなくて』とおもうこと」にはじまり、以下この調子でつづくのだが、トルストイは第九条をどうしても思い出せないし、そのくせ第九条にこだわる。

これは日本国憲法9条の事ですね。

「人はさびしく、かなしく、ひとりぼっち。にげたくなる、くるしくなる、しにたくなる、」

♪ やるせない世界を
   すくうものはなにか
   かれが その答えを 
    まさに 出したところ

  わらう わらい わらえ
   それが ひとをすくう
    かれは 前へすすむ
    ひとり きびしい道を  ♪

ガーシュインチャイコフスキーの「ロマンス」に日本語の歌詞つけたりリチャード・ロジャースのミュージカル「オンユアトウズ」などの劇中化を転用するなんてうまいですね。もう一度よく観たくなる作品です。

タバコは苦手だけれど大竹しのぶの「タバコはいかが?」魅力的。「かもめ」の一場面!?彼女は年配女性や公務員未亡人、ひげの警官も演じます、すごくチャーミングです。

井上芳雄インタビュー
段田さんや生瀬さん、どうして歌わなくちゃいけないんだ、とかいいながら歌うんですけど、
 でも、ああいうふうに素朴に歌った方がいいのかな、と思ったり、
 大竹さんなんか、まるでセリフをしゃべるように歌うでしょ、

大竹しのぶインタビュー
台本が最後までできていない中で、とにかくできた順から稽古していく。
最終的にどうなるかわからないのに、役作りしなくてはならないのだから、
「ほんとに私たちよくやってるよね、と励ましあいながらやった」という言葉には重みがあります。

彼女は、最初の場面ではマイムだけのヒゲの警察官。
次がリュウマチ持ちのチョイ悪老婆。
「このおばあさんの役だけで終わっちゃったらどうしよう、とか思いながら稽古しました」
「でも、いい本ができることを信じて待って、そしていい本ができてきたから」。

ぴかちゅうさんの東京裁判三部作夢の痂レポ
今日のNHKスタジオテーマパークで「夢の痂」主演の角野卓造が出ていて井上さんの思い出を語ってくれた。一部しか観ることが出来なかった。

「井上さんはご自分の芝居を観るのが好きで満席になると当日券に並んでチケット買って観ていた。
覚えやすい台詞はご自分でも台詞を言いながら書いていたからでしょう。」

私は上京した時ロマンスやっていても完売で観ることが出来なかったのです。演劇観始めた頃、井上作品は演劇鑑賞会で何回か、観ることが出来ました。ところが最近では来なくなっていました。
劇団新感線もそうですが、地方回るには多額の費用がかかりますから仕方ないのでしょうが残念すぎます。

追記 あの有名なスタニスラフスキーも彼の戯曲を悲劇と間違って認識していたこと。チェーホフと同時代人で彼の作品に出演もしていたこと。

チェーホフが妻オリガに呼びかけるたくさんの言葉が微笑ましい。こんな言葉は日本人には無理なんでしょうか。
「やあ、素敵な奥さん、私の喜びさん、黄金50キロのかたまりさん、世に並びなき女優さん,血色のいい赤んぼうさん…

大竹しのぶも井上先生から「あなたは宝だ」と言われたそうですがそのとおりです。井上先生の暖かさ、
[ http://blogs.yahoo.co.jp/shishi5235/30983156.html 大竹さんのおじい様も平和の闘士]