<span itemprop="headline">中日新聞日本人の幸福度上げるには 互いの信頼感高めて</span>
日本人の幸福度上げるには 英国人ジャーナリスト、マイケル・ブースさんに聞く
2016/12/23 朝刊
仕事に子育て、介護、ローンの支払い…。追われることばかり多くて、幸せを感じることが少ない日本人。対して、税金は高いが充実した福祉に支えられ、労働時間も短い北欧諸国は、各種調査で国民が感じる幸福度が高い。日本と北欧の双方に明るい英国人ジャーナリスト、マイケル・ブースさん(45)が今月来日したのを機に、どうすれば日本人の幸福度を上げることができるのか聞いてみた。
◆互いの信頼感を高めて
背景にあるのが、まず教育の問題。北欧の子どもたちは、大学まで貧富の差によらず均質な教育が受けられ、「将来は何にでもなれる」
と教えられて育つ。日本では、貧富によって教育機会にも差がつき、最終的にはどの大学を出たかで就職も左右される。人生を考えるより、試験をパスすることが先決になっている。
と教えられて育つ。日本では、貧富によって教育機会にも差がつき、最終的にはどの大学を出たかで就職も左右される。人生を考えるより、試験をパスすることが先決になっている。
ブースさんによると、子どもの学力が世界トップ水準にあるフィンランドでは、学校での試験や宿題はほぼゼロ。
教師が指導力を発揮し、子どもの自主性を引き出している。大学は専門コースに分かれ、難易度などのランキングはない。
教師が指導力を発揮し、子どもの自主性を引き出している。大学は専門コースに分かれ、難易度などのランキングはない。
もう一つの日本の難点は政治不信。デンマークでは、多数の政党が実力を拮抗(きっこう)させて多様な意見を政治に反映させており、「国民は民主主義を実感できる」。日本では長年、一党が政治の中心を担い、
野党は実力不足。政治に期待しても暮らしは良くならないという印象が強い。
野党は実力不足。政治に期待しても暮らしは良くならないという印象が強い。
このほか「女性の社会進出が遅れている」「長時間労働が当たり前で、働き過ぎ」といった面も、幸福感を妨げる要因に挙げた。
しかし、日本は世界に誇る産業力を持ち、諸外国と比べればまだ貧富の差が少なく、一定の社会保障制度が整い、国民は勤勉で社会秩序を重んじる、など北欧諸国との共通点が多いのも確か。ブースさんが幸福度アップの一つのヒントとするのは「平等で安全な社会の中で、もっと互いの信頼関係を高めること」。
北欧は世界の中でも国民同士の信頼度が高いが、それによって行政機構は質素になり、企業間取引も低コストで済む。教育でも、生徒が教師を信頼できれば学業に専念できる。生産性の高い社会が厚い福祉を支え、国民の団結力を高める。何より「他人と比較する必要がなければ、皆が幸福を感じやすい」
という。
という。
政治は、有権者の投票行動で変えることができる。政治が変われば、教育や労働制度も変わる可能性がある。あとは、一人一人が主体的に人生を設計し、「隣人と同様に生活を楽しんでいる」と思うことが、幸福度を高める鍵のようだ。
(白鳥龍也)
(白鳥龍也)
<マイケル・ブース> 英国生まれ。妻の故郷のデンマークに一家で在住。100日間で日本国内の和食を食べ歩き、その経験を著した「英国一家、日本を食べる」がアニメ化された。北欧5カ国を訪ね、本当に幸福なのか検証した「限りなく完璧に近い人々」の和訳本(KADOKAWA)を今秋刊行した。