<span itemprop="headline">わたしは「主人」アレルギー。「嫁」も気が滅入る。言葉をもっと大切に! 4歳になるひとり息子を、芥川賞作家夫婦で育てながら超多忙な日々を送る川上未映子さん。</span>
【第4回】わたしは「主人」アレルギー。「嫁」も気が滅入る。言葉をもっと大切に!
ありがたいことに生まれてこのかた40年、色々あるけど大病もせず、アレルギーもなく、なんとか適当にやってきた、はずなのに……この数年、そう、最初に結婚したあたりから、「ある言葉」を耳にすると眉間に皺が寄り、体じゅうにかっと血がめぐり、のち死んだ魚の目になって脱力する、という具合になってきて、どうしたものかと今日もフレシネを飲みながら考えた。
この言葉を聞くだけで心の底から気が滅入る
その言葉とは、ずばり「主人」。そう、わたしは「主人」アレルギー。
この言葉を聞くと、いらっとして、本当にぐったりしてしまう。いや「主人」という言葉に当然のことながら原因はなく、もちろん、その言葉の使われかたに対してだ。たとえばママ友なんかが、自分の夫をすごく当然のことのように「主人」と言うのを聞くと、あるいは相手の伴侶のことを「ご主人は」なんて言うのを聞くと、もう本当に、これが心の底から気が滅入るのである。
お年を召した老婦人が自分の夫のことを「うちの主人が」なんて言うのを聞いても、「まあしょうがないよな世代だよな」と思うんだけど、まだ三十代になりたてとか、あるいはわたしと同世代とかで、自分もばりばり仕事してて対等な立場であるはずなのに、夫のことを「主人」と呼ぶ人が、これが本当に多いのだ。
でも、どう考えても「主人」というのは従属関係を示す言葉で、自分が相手より劣った存在である、身分の低い存在であるということを表す言葉だ。この言葉がふつうに使用されているのを聞くのは、かなりしんどい。
転載元: 情報収集中&放電中