<span itemprop="headline">「自民改憲案」を高知新聞社説で「平和国家が崩れていく」</span>
「自民改憲案」を高知新聞社説が取り上げる
憲法記念日に当たり、高知新聞は自民改憲案について1~3日の3回に分けて取り上げ、その問題点を明らかにしました。ここでは緊急事態条項については取り上げていませんが、限られた字数の中なので問題点のすべてを網羅するというわけにはいきません。
是非各紙で取り上げてその問題点を明らかにして欲しいものです。
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高知新聞 2016年5月1日
草案はどのような「国のかたち」を目指そうとしているのか。3日の憲法記念日に合わせて、近代憲法の本質である立憲主義や、現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という三つの基本原則を中心に考えてみたい。
全面的に書き換えられた自民党草案の前文はどうか。「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって…」で書きだされている。「日本国民は」が主語の段落もあるが、続くのは国の防衛や基本的人権の尊重などの義務だ。
国民主権はうたっていても、主語の変更には国家を国民の上に置くような考え方がにじみ出ている。憲法の「名宛て人」、つまり対象は権力という立憲主義に対する無理解にとどまらず、嫌悪感のようなものがあるのではないか。
高知新聞 2016年5月2日
前回みた近代立憲主義の中心となっているのは「個人の尊重」と「法の支配」だ。国家の優先が個人を犠牲にしてきた歴史を踏まえ、確立されたといってよい。
現行憲法は「すべて国民は、個人として尊重される」(13条)と規定し、そのための基本的人権を保障している。さらに97条は基本的人権について「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」「侵すことのできない永久の権利」とうたう。
自民党の改憲草案は「人として尊重される」と書き換えるとともに、97条は削除した。「個人」と「人」は大して違わないようにみえる。だが、「個人の尊重」が個人主義の原理の重視を意味していることを考えれば、個人の人権を軽視しかねない危うさがある。
草案のQ&Aは「公共の福祉」は曖昧で分かりにくいとする。それは否定しないが、公共の福祉には人権を制限できるのは他者の人権だけだという制約にとどまらず、財産権などでは公共の利益による制約も含めるようになっている。
公益・公の秩序と書き換えても曖昧さが消えるわけではない。これまで以上に国益や公共の目的を前面に出して、人権を制約できるようになるだろう。制約するための法律制定が容易になれば、人権保障は非常に危うくなる。
とりわけ問題なのは、集会や言論などの表現の自由にも公益・公の秩序による制約を加えたことだ。Q&Aは公の秩序について「『反国家的な行動を取り締まる』ことを意図したものではない」と釈明するが、それ自体が危うさの証しといえる。
安倍首相は「価値観を共有する国々との連携」をよく口にする。民主主義や法の支配、人権尊重などの普遍的価値観のことであり、その基盤である近代立憲主義も当然含まれるだろう。
【自民改憲案(下)】平和国家が崩れていく
高知新聞 2016年5月3日
現行憲法は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」とする。破局に至った戦争の歴史への反省を踏まえた平和主義の宣言だ。戦後の初心といってよい。
また、現行憲法の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という部分は、「ユートピア的発想」だとして跡形もない。9条の変更を念頭に置いていることは間違いない。
理想論といえば、その通りかもしれない。だが、戦後の再出発に当たって掲げた平和への志を簡単に捨て去ってよいものだろうか。
9条について自民草案は、国際法を踏まえて「戦争の放棄」は受け継いでいるものの、現行憲法を特徴づける「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を削除。「自衛権」を明記して集団的自衛権を行使できるようにするとともに、「国防軍の保持」をうたっている。
「違憲論」もある中、歴代の自民党政権は憲法解釈に基づき、自衛隊を「専守防衛のための必要最小限度の実力組織」としてきた。いまや世界有数の実力を保有し、災害時などに活躍する自衛隊を憲法でどう位置付けるかは、あらためて論議してよいだろう。
近代立憲主義からの逸脱のほか、国民主権や基本的人権の尊重、平和主義の変質をもたらしかねない自民草案はどう捉えるべきなのか。個々の条文にとどまらず、草案全体を貫く方向性をきちんと見定めることが不可欠となる。
私たちは憲法を「不磨の大典」とは考えていない。私たちや子、孫らのためにどうしても必要であるなら改正してもよいが、改悪は絶対に避けなければならない。国民一人一人が主権者として熟慮を重ねた上で結論を出す必要がある。
転載元: mimiの日々是好日