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悲劇に心寄せる若者の力信じる
東日本大震災の直後、米艦隊が東北沖に派遣され、支援物資の輸送などをした救援活動「トモダチ作戦」。主力となった原子力空母「ロナルド・レーガン」の乗組員だった兵士たちの中には、活動中に被ばくし、がんや白血病などを発症、これまでに十数人の死者が出ている。兵士らの声に耳を傾け、支援活動を続ける日系米国人のジャーナリスト、エィミ・ツジモトさんは、兵士らの実情や放射能被害の恐ろしさを訴え続けている。(浅井弘美)
-被ばくした兵士たちのことを知ったきっかけは。
米国の大学で日本学を学ぶ学生たちとの来日準備をしていたとき、3・11が起きました。私は母が広島で被爆し、被爆二世としての経験から、常に「放射性物質は人体に影響がある」と言い続けてきました。
教え子の友人が、空母レーガンに乗り込んでいて、彼を通じて救助作戦の初日に艦内へ戻った時のパニック状態の動画を送ってくれたことがきっかけでした。
-兵士たちはどんな状況だったのでしょう。
作戦を開始したとき「妙だな」と感じたようです。甲板に整列したとき、寒風が吹きすさび、大きな兵士でも揺れそうな感じなのに、外気がすごく生暖かい。そんなことを言っているうちに、お口の中が、チューイングガムをホイルごと放り込んだような味がすると、何人もがそう言うんです。だが、不平など言っていられない。海に浮かんでいる人々の救出や物資の運搬が始まろうとしていたのです。ようやく作戦が終わって艦内に戻ると、ゲートがあって「ビービービー」と、音が鳴るんですよ。信じられない濃度の高い放射線量を検知した音だった。幾人かの兵士たちが「これは大変だ」ということで、本当であれば、任務中は携帯電話を使えないのですが、各自がほんの数十秒ずつ動画を撮ったんです。教え子に動画を託せば、最終的にエィミに届いて、被ばく=深刻な事態と認識してくれるに違いないと。
-何人ぐらいの兵士と会ったのですか。
相当な数です。十代、二十代前半の非常に若い人が多かったんですね。「自分たちもこういう状況だから、福島にいる人たちは、もっと大変でひどい状況になっているだろう」と言い残して亡くなる兵士もいました。
重症で体が動かない兵士、足を切断した兵士もいます。脳腫瘍で頭の三分の一がえぐり取られた兵士もいました。
私は何人もの兵士たちの声を聞くにつれ、これは日本政府は黙っていたらいけないんじゃないかって思ったわけですね。
当時の民主党政権がオバマに頼んで、救援に行かせたのがレーガンだったわけです。でもその後、民主党の人たちはまったくレーガンの被ばくの認識がない。何らかの思いを寄せてしかるべきではないかと。
-兵士たちの健康被害は深刻ですね。
兵士たちは、東京電力に対し自分たちの医療費だけは、せめて援助してもらえないかという裁判を起こしたけど、そこはなかなか思うようにいかない。米国政府は「被ばくの事実は認める。だからといって直接健康上被害になるようなものではない」と、日本政府は「被ばくはした。放射性物質は放出された。だからといって、人体に影響を及ぼすほどではない」と言い続けている。
兵士たちの被ばくの実態を書いた私の本も一時期はベストセラーになったんですが、ある時期からぴたっと止まったんですね。
兵士の言葉を残せば、放射性物質や被ばくの脅威が伝わるのではないかと、朗読劇にしました。
-著書をもとにつくられた朗読劇「悲しみの星条旗」は、京都などで昨年夏に上演され、DVDの上映会も各地で好評でした。
DVDはいずれ兵士たちに見てもらおうと思って、撮っていたんですけど、出来ばえが良かったんです。京都の舞台の上演会が終わった後、感想を聞くと、見られなかった人たちから「次はいつやる?」という声があって「じゃあ、DVDをお見せしましょう」となりました。何回か上映して反響を呼び、大学生も高校生も来ました。それが連鎖して、特に関東では、横須賀(神奈川県)の舞台から広がった。横須賀は、空母レーガンの母港なの。若い世代の動きに大人も刺激を受けて、教職員組合や名古屋市、長野県などでは、市民団体が上映会を開いてくれました。
-学校でも上映会が企画されたようですね。
本当に素晴らしいと思いました。高校生たちは、「原発反対」と声をあげるだけの大人たちに対し、「自分たちの将来を具体的に考えてくれているのか」ともやもやしたものがあった。舞台を見たことで、問題を身近に感じたのではないでしょうか。先生に上映会の開催を一生懸命説得した結果、先生方が根負けして「DVDを見て、エィミに来てもらってお話を聞こうじゃないか」となった。非常に意義のある動きでした。
何カ月もかかって至った結論でしたが、コロナの影響で中止になりました。高校生たちの熱い思いが立ち消えになったことは、残念ではあるんだけど、私は若者たちに希望を抱いているんですよ。他人のことではない、自分たちのことでもあるんだという認識を持ってくれた。単純な朗読劇が、彼らの認識を深めていったんだと。
あともう一つ、千葉県の高校生たちが、大人に見に来てもらいたい、と自分たちで上映会を開いてくれた。これも、素晴らしい動きでした。若者たちが、草の根レベルで大人たちを突き動かそうとする、今までにない信念がわき起こる起爆剤になってくれたことは、亡くなっていく兵士たちにとっても、大いに励みとなっています。自分たちが命がけで救出作戦に従事できたことが誇りとなっていくと思っています。
-DVDは、福島の人たちにこそ、見てもらいたいのではないですか。
緊急事態宣言前の三月、福島市内の映画館でDVDが上映されました。そこに来た人たちが、原発の反対運動や福島における被害者の裁判については、たくさん報道されるけど、米兵にまで甚大な放射能被害が及んでいることは、今の今まで知らなかったということをおっしゃったんです。それはちょっと、意外に思いました。
宮城県気仙沼市でDVDをお見せしたときも、皆さんびっくりされたんです。というのは、トモダチ作戦は気仙沼の大島でも行われているんです。兵士の中で最初に死者が出たのは、大島で活動を繰り返したヘリコプターの兵士なんです。見に来ていただいた方たちは、助けてもらった身として、これから何ができるか検討したいと言われ、うれしかったです。
-上映会は、人々の気づきにつながっています。
若者たちが、放射性物質による被害の実態を身近なものとしてとらえ、非常に積極的にDVDを上映するうねりへと続いている。そのうねりが、本当であれば、五月のゴールデンウイークに広島で公演の予定だったんですが、コロナの影響で延期になったのはとても残念なんです。だからといって、終わったことではない。置き去りにされた兵士たちの問題は、米国を起点として世界に広がる黒人差別への抗議運動にも通じるところがあると思っています。
私自身は、被ばくをテーマにするジャーナリストではないのですが、被爆二世という立場から、自分自身のライフワークとして、兵士の苦しい被ばくの実態に寄り添っていきたいと思っています。
えぃみ・つじもと 米国ワシントン州出身。日系4世の米国人。アイルランド、ニュージーランド、オーストラリア、日本に在住し、日系移民の歴史や捕虜問題など現代史に関する記事を多数発表している。近年は、米国の政治・外交に関する記事を日米の雑誌や新聞に寄稿している。2016年5月、小泉純一郎元首相と、被ばくした兵士らの面談を実現させたほか、のちに同氏とともに、兵士らの治療費に充てる「トモダチ作戦被害者支援基金」を設立。著書に「漂流するトモダチ アメリカの被ばく裁判」(共著、朝日新聞出版)など。
あなたに伝えたい
私は若者たちに希望を抱いているんですよ。他人のことではない、自分たちのことでもあるんだという認識を持ってくれた。
インタビューを終えて
「早急に何をしなければならないのか、訴えていくのが本来のジャーナリズムの役目」「記者は心に寄り添わないといけないのよ、事件じゃなくてね」
インタビュー中、ツジモトさんに言われた言葉だ。私も取材の際は、相手の気持ちをできる限りくもうと心掛けているつもりだが、「寄り添う」という言葉の重さを考えさせられた。兵士らのためにボランティアで支援に動く行動力にも敬服した。
兵士たちの苦しみは壮絶だ。被ばくによって子宮を摘出された女性の話には、言葉を失った。
兵士たちに思いを寄せ、苦しみが和らぐよう、私もできる支援を考えたい。
引用終わり
皆さんに知っていただきたい重要な内容です。
絵文字は私がつけました。
@shiikazuo
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安倍政権の2799日。 安保法制、秘密法、共謀罪、違憲立法を強行し、 沖縄の民意を一顧だにせず辺野古基地建設を進め、 消費税を5%から10%へと2倍にし、 派遣法大改悪で雇用破壊を加速させ、 対米、対中、対ロ追随外交が行き詰まり、 森友、加計、桜、国政を私物化。 共闘の力で引導渡そう!
にゃん吉
@nyankichi_uiy
吉田照美氏「結局、年金問題もどんどん先送りされ、自分が出したお金が戻ってこないで死んでいく。その事実に気付かされてないのはメディアの責任は凄く大きい」 昨年、厚労省は財政検証で年金の給付水準は3割下ると公表。 問題は参院選が終わるのを待って公表したって事。
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小池 晃(日本共産党)
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